過払い金の基本と払い過ぎ利息の回収方法

過払い金は借金と混同している人が多いですが、両者はまったく性質が異なります。ここでは過払い金の意味と返還請求、過払い金回収によるメリットやデメリットについて紹介しています。払いすぎた利息はしっかりと返してもらい、収支のバランスを健全にしましょう。

過払い金とはどのようなもの?

本来支払う必要のない利息を過払い金と呼んでおり、グレーゾーンの利息分を指しています。過去に20.0%より高い金利で借りていた人は、過払い金が発生しています。かつてはグレーゾーンで貸出しても違法にならなかったため、高金利で融資する消費者金融が数多く存在したのです。

払いすぎた利息が過払い金

過払い金とは本来支払うべき必要のない利息のことで、過払い金請求をすれば戻ってきます。すべてのローンに発生しているわけではなく、ノンバンク系の多目的融資に限られています。代表的なローンは消費者金融のキャッシングやカードローン、フリーローンで、銀行融資は除外されるのです。また消費者金融の場合でも、おまとめや事業資金などに特化した目的ローンも除外されます。

具体的には利息制限法を超えて支払っていた過剰金利分を過払い金請求により返還できるわけです。利息制限法では借入元本によって上限利率が異なり、10万円未満は20.0%、10万円〜100万円未満は18.0%、100万円以上は15.0%に設定されています。10万円を20.0%で借りるのは問題ありませんが、100万円をこの利率で借りると違法になるわけです。例えば過去に100万円を25.0%で借りていたなら、10.0%は余分な金利を支払っています。かつては利息制限法を超えるグレーゾーン金利が黙認されていたのです。出資法の上限である29.2%までの金利は違法になりませんでした。無効でありながら違法金利に該当しないのがグレーゾーン金利なのです。

グレーゾーン金利で融資された訳

貸金業者が利益を得る手段は、ローン利用者が支払う利息だけです。多くの利息を回収すればするほど、自社が潤っていくのです。そのため消費者金融の多くはグレーゾーン金利を利用し、無効の金利を課していました。出資法の29.2%を超えた利率は違法となり罰則対象ですが、利息制限法を超えても罰則はありません。黒でも白でもないグレーという意味で、グレーゾーン金利と呼ばれているわけです。古くから消費者金融を利用していた人は、28.0%など相当な高金利で借りていたはずです。利用明細をチェックすれば、何%で借りていたかわかります。

かつてのキャッシングなどには、旧貸金業規制法のみなし弁済が存在していました。特定の要件をクリアしていれば、利息制限法を超える金利で融資してもよいとされていたのです。これを貸金業者は都合のよいように解釈し、現在よりずっと高い金利で融資していました。現在は貸金業法が改正されたことで、グレーゾーンでの貸出は禁止されています。以前と違って違反すると罰則対象になりますので、ヤミ金などの悪徳業者を除いて20.0%以下の金利に設定されています。

過払い金を調べる方法とは

過払い金が発生しているか調べるためには、借入していた貸金業者に対して取引履歴の開示請求をします。その上で引き直し計算をして、正確な金額を算出していきます。自分で大まかに過払い金発生の有無を調べるためには、20.0%より高い金利で借りていたかどうかが焦点です。

こんな人は発生している可能性が

過去にキャッシングなどから借りていた人は、過払い金は人ごとだと思わないようにしましょう。最もシンプルに見極める方法は過去の利用明細のチェックで、20.0%を超えていたかどうかがポイントです。現在は20.5%といった金利は認められていませんので、こうした金利で借りていた人は回収できる可能性があります。対象となる金融機関はほとんどが消費者金融で、銀行や信用金庫などは利息制限法の範囲内で融資していました。そのため銀行のキャッシングを利用していた人は回収できないと考えてください。ただ念のために過去の借入利率はチェックしておくのが得策です。

過払い金が多く発生している人は、高金利で借りていた場合だけではありません。高額の借入をしていた、長期返済をしていた、などに該当する場合も高額請求ができる可能性大です。過払い金は借金ではなく自分自身のお金ですから、発生している場合は金融機関に遠慮せずに回収しましょう。当然ながら借金ではないので、請求手続きをしてもブラックリストには載りません。メリットしかない手続きですから、やらないのは絶対に損です。弁護士を通して回収した人は、100万円以上戻ってきたケースが数多くあります。

取引履歴の開示請求をしよう

過払い金が発生しているか明確に調べるためには、過去の取引履歴の開示請求をする必要があります。過去の利用明細を保管していれば一番よいですが、8〜10年以上も前の書類を保管していない人は多いはずです。2008年より前に借金完済をした場合は、過払い金が発生していると考えられます。取引履歴の開示請求は弁護士に依頼すれば、自分の代わりに行ってくれます。債権者に対して請求し、過去の利用履歴から正確な過払い金を算出していくのです。

任意整理で借金を解決する場合も、引き直し計算によって過払い金が発生しているか調べていきます。弁護士に依頼をするべき理由は、自分で正確に調べるのが難しいためです。借入利率に加えて借入総額、返済期間などで払いすぎた利息の金額は変わってきます。正確な利息を知るためには、やはり専門家に任せるのが得策でしょう。自分で金額の把握ができても、債権者に対して返還請求をするのは容易ではありません。なんの抵抗もせずに返還するケースは少なく、大抵は減額を求めてきます。また返還自体を渋ってくるケースが多いため、回収に多大な時間と労力を必要とします。弁護士に依頼をすれば、依頼者は待っているだけでいいのです。

過払い金には時効があります

過払い金を回収する上で注意したいのは、時効が存在することです。最後の取引から10年で時効を迎えて、過払い金の請求権は消滅します。そうなる前に回収する必要があるので、早めに弁護士に相談して返還請求の代行をしたもらうのが得策です。

取引終了したローンには注意を

過払い金が発生している状態であっても、無条件で回収できるわけではありません。注意したいのは過去に利用していたローンに過払い金が発生し、最終契約から長期間を迎えている場合です。過払い金の請求権は有期限であり、10年で消滅してしまいます。取引終了から10年間として計算しますので、2010年に完済した人だと2020年で時効を迎えてしまうのです。つまり2019年の段階では10年に達していないので、回収する権利が残っています。10年を過ぎると弁護士や司法書士に依頼しても無理ですから、取引終了したローンがある人は早めのアクションをおすすめします。

過払い金の発生は他人事だと考えている人が多いですが、実際に発生しているケースは多々あります。他人事だと思わないことが何より大切で、加えて過去の利用明細をチェックする習慣が必要でしょう。もしかしたらと思うことが調べるきっかけになりますので、まずは一番古い取引履歴を見てみるとよいです。契約段階の金利をチェックし、20.0%より高い金利で借りていないか確かめることも重要です。過払い金は発生していないと決めつけている人は多いですが、実際は発生していることが多々あります。

過払い金請求は早めに実行

消費者金融のキャッシングを利用していた人は、何度も借りたり返したりしていたケースが多いです。こうした使い方をしていた場合は、相当な過払い金が発生していると考えられます。過払い金請求をするきっかけとなるのは、借金返済が厳しい場合が多いです。キャッシングの金利は今でこそ低くなりましたが、それでも20.0%まで認められています。住宅ローンや自動車ローンと比較し、比べものにならないほどの高金利でしょう。キャッシングから100万円も借りていれば、利息だけでも相当な金額になります。

借金の返済がスムーズに進まないと、利息だけ延々と支払い続けることになります。すると借金の元金が減らない状態に陥るので、いつまでも借金から抜け出せません。返済に逼迫している状況にある人は、弁護士に相談してみてください。その結果として過払い金の存在に気づけるケースは多く、過払いが発生していれば弁護士に返還請求をしてもらうことが可能です。弁護士は債権者に対して強力な発言権を持っていますので、高額の回収が期待できるでしょう。いずれにしても過払い金請求をするべきタイミングは早ければ早いほどいいです。

過払い金のメリットとデメリット

過払い金の回収にはデメリットが生じるケースもありますが、それと比べてもメリットが圧倒的に大きいです。払いすぎた利息を回収すれば、借金がゼロになる可能性もあります。過払い金が借金を上回っている場合は、ブラックリストに載る心配はないです。

過払い金請求をする上での注意

借金を返済している途中で過払い金の発生に気づくという人は多いです。もちろん返済途中でも過払い金請求は行えますが、知っておくべき注意点があります。それは借金を債務整理で解決する場合は、ブラックリストに登録されることです。例えば100万円の借金に対して過払い金が50万円発生していれば、債務残高を50万円まで減額できます。さらに残額を任意整理や個人再生、自己破産などで解決すれば、債務整理をした扱いになるのです。

もちろん残額を一括返済できればブラックにはなりませんが、ほとんどの人は厳しいでしょう。返済中の借金に対して過払い金請求をし、どの程度残高を減額できるかは自分で把握するのが難しいです。必ず弁護士に相談をして、詳細な金額を把握しておきましょう。理想的なのは多額の過払い金が発生しており、借金をすべて相殺できることです。借金よりも回収できる利息のほうが大きいなら、債務整理には該当しません。過払い金請求の手続きをすることでローン完済ができるのか、それとも債務整理もあわせて行う必要があるのか、弁護士からよく聞いておきましょう。ブラックリストに登録されると、5年間はローンの利用ができなくなります。

ブラックになる心配がないケース

過払い金請求をしたいけど、ブラックリストに載るのが心配と考えている人は多いです。債務整理をすれば確実にブラックリストに登録されますが、完済した借金に対して過払い金請求をする場合はその心配がないです。払いすぎた利息は自分のお金であるため、回収するのは当然の権利になります。権利を行使してもペナルティなどありませんから、まったく問題はありません。もし100万円の借金に対して120万円の過払い金が発生していた場合は、借金を相殺した上に20万円を受け取ることができます。

ひとつだけ注意したいのは、過払い金請求をした会社から再度借入するのはできないことです。確かに個人信用情報機関のブラックリストには登録されませんが、金融機関の自社リストには登録されます。過払い金請求をされた債務者には、再び貸したくないというのが本音でしょう。ただ他社からは借りられますし、新しく
キャッシングやクレジットカードの契約もできます。デメリットはほとんどないので、過払い金請求をしないのは絶対に損です。債権者側から一方的に返還する話を持ちかけてくる可能性はゼロなので、自分から弁護士を通して回収する必要があります。

まとめ

過払い金は支払うべき必要性のない利息であり、債務者は回収する権利を持っています。過払い金は放置しておくと時効になり、返還請求ができなくなります。回収するためには過払い金の診断をして、発生しているか確かめることが第一歩です。もし発生していたら弁護士に依頼し、速やかに回収するのが得策です。

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