過払い金返還請求をして戻ってくる金額と戻ってくるまでの期間は、訴訟になるかどうかで違いが出ます。満額などなるべく多くの金額を求めるのであれば訴訟をしたほうがいいのですが、回収までに時間がかかるようになります。そのため、金額と期間のどちらを重視するのかが判断の基準になります。
返還金額は訴訟をするかで変わる
過払い金返還請求では請求した通りの金額の返還に応じてもらえることは稀で、到底納得できないような金額での和解条件を提示されることもあります。より高い金額の返還を求めるのなら、訴訟を提起することが必要です。
交渉では全額返金は難しい
訴訟というのは手間がかかりますから、多くの人は訴訟はせずに過払い金返還請求を終わらせたいと考えます。ですが、要求通りの金額を返してもらいたいのであれば、訴訟は避けて通れないものになります。
過払い金は払い過ぎたお金であり、貸金業者が不当に得た利益ですから、その返還を求めるのは正当な権利として認められています。とはいえ、貸金業者も仕事ですから、過払い金を全額返したくはありません。過払い金返還請求の交渉では請求された通りの金額を返してくれることはほとんどなく、巧みに交渉して可能な限り金額を減らそうとしてきます。
多くの貸金業者が和解条件として提示してくるのは、過払い金の5〜7割程度です。特に個人で過払い
い金請求を行う場合には素人であるため、業者側も強気に交渉を行ってくることが多く、完全に業者側のペースで話し合いが進んで足元を見られて返還額がさらに減らされる可能性もあります。過払い金返還請求を得意とする弁護士に依頼して交渉してもらえばもっと多い金額を回収できるかもしれませんが、それでも交渉だけで満額を返してもらうことは難しいと言えます。
訴訟になると返還額は多くなる
過払い金を全額かそれに近い金額返還してもらいたいなら、裁判所に訴訟を提起するのは最も有効な手段となります。訴訟というと手間がかかって大事になるのではないかと考える人も多いのですが、過払い金請求訴訟ではスムーズで有利な解決に役立ちます。
なぜなら過払い金というのは貸金業者が得た不当な利益であり、すなわち違法なものなので、裁判になれば特殊なケースを除いてほぼ負けることがないからです。さらに、過払い金は利息まで請求することも可能ですが、裁判になるとこの過払い利息も請求しやすくなるというメリットがあります。
裁判は貸金業者にとっては圧倒的不利ですし悪いイメージもつきますから、事をあまり荒立てたくないと考えることも多く、訴訟になると物腰が柔らかくなる傾向があります。過払い金返還請求で訴訟になった場合も、貸金業者は穏便に和解に持ち込みたいため満額に近い条件を提示してきます。
その金額に納得できるなら和解してもいいですし、納得できなければ判決を待ってもいいわけです。少なくとも、裁判をすれば交渉だけのときよりも多い金額を確実に返還してもらうことができます。
返還にかかる期間の違い
過払い金返還請求訴訟をすれば返還される過払い金は多くなりますが、返還されるまでの期間は長くなります。また、業者によっても返還までの期間は違いがあり、特に請求権の時効が迫っている場合には注意が必要です。
訴訟をすると返還期間は長引く
過払い金返還請求のために訴訟をすると取り戻せる金額は多くなりますし、手間も弁護士や司法書士に依頼すればそれほど多くはありません。ただ、過払い金を返還してもらうまでの期間は長引くことになります。交渉であれば和解すれば数か月程度で過払い金が振り込まれますが、訴訟では準備や判決が出るまでの期間などもあるため、長い時間が必要となることも珍しくないからです。
過払い金返還請求の段取りとしては、まず最初に貸金業者から取引履歴を取り寄せて過払い金を算出することが必要ですが、この段階で準備に1〜2か月ほどかかります。その後、過払い金返還請求書を送付して業者と交渉を行います。すんなり和解できればここで終わりますが、和解できなければ裁判所に訴訟を提起することになります。ここで満額に近い金額での和解が業者から提示されることもあるものの、判決が出るまで待てば時間がかかります。
驚くほど長い期間がかかるわけではありませんが、実際に過払い金が返ってくるまでに一年以上かかることもあります。なるべく早くお金が返ってきてほしいと考える人には、少し長いかもしれません。
業者によって返還期間が変わる
訴訟だと過払い金が返ってくるまでの期間が長引きますが、それ以外にも貸金業者によって期間が変わることもあります。
貸金業者は儲かっているところばかりではなく、資金繰りが苦しい業者もいます。資金力のある大手の銀行が関わっているクレジットカード会社であればスムーズに過払い金も返ってくることが多いのですが、過払い金の返還に充てることのできる資金が少ない業者では、請求があっても対応できず期間が長引いてしまうことも増えます。
また、注意しておきたいのが時効の存在です。過払い金返還請求権には取引終了から10年という消滅時効が存在するからです。貸金業者は過払い金返還請求がされずに期間が過ぎれば、過払い金を払わなくて良くなるということになります。その消滅時効を停止する方法もありますが、法律の知識がない個人で過払い金返還請求を行おうとする場合には知らずに時効となってしまう恐れもあります。酷い場合には、貸金業者が過払い金返還請求に必要となる取引履歴の送付に応じずに時間を稼ぐということもあります。
もし時効が迫っているのであれば、早めに行動を起こすことが必要です。
和解か訴訟かはどう判断するか
過払い金返還請求は、和解する場合でも訴訟を提起する場合でもメリットとデメリットがあります。そのため、より納得できる過払い金返還請求をするには、自分の目的や希望に応じてどうするのが良いのかを判断することが重要です。
コスト面から訴訟を考える
過払い金請求訴訟を提起すれば全額かそれに近い金額の過払い金が戻ってきます。ただ、それにかかる手間や、専門家に依頼するための報酬といったコストを考えると、あまり得にならないという場合もあります。
もし個人で過払い金請求訴訟をすれば、その準備や手続きを全て自分自身で行わなくてはならず、平日であっても裁判所に赴く必要があるなど、相当な手間と時間がかかります。体力面だけでなく精神的な苦痛も大きくなりますから、全額返金されたというだけでは釣り合わないこともあります。
一方、弁護士や司法書士といった専門家に依頼すれば、プロの経験と知識で訴訟をスムーズに進めることができるようになりますが、当然報酬を支払うことになります。専門家に支払う報酬は、業者との交渉で和解が成立した場合には過払い金の20%程度ですが、訴訟になると過払い金の25%程度と高くなります。
過払い金返還請求で少しでも多くのお金を手にしたいとか、なるべく楽に過払い金返還請求を済ませたいなど、自身の目的に応じて考え、訴訟がお得なのか和解で済ませたほうがいいのかを検討して選択することが大切です。
満足感のための訴訟もあり
過払い金というのは、貸金業者が高い金利で搾取したお金であり、違法なものです。ですから、過払い金を全額返して欲しいという主張は正当なものですし、本来は全額返してもらうのが筋というものです。
にもかかわらず、過払い金は貸金業者が自発的に返してくることは絶対に無く、本人が請求しなければ返してもらえません。さらに、過払い金返還請求をしてもほとんどの貸金業者は過払い金の5〜7割程度で和解することを提案してきますし、少しでも支払う金額を減らそうとしてきます。
貸金業者の和解条件に納得できないという人も多くいますが、お金が少しでも戻ってくればいいと考える人も多いため、そんな金額でも和解は成立します。ですが、自分自身が納得できないのであれば、後悔しないように全額返還を目的として訴訟を提起するのもおすすめです。損か得かということではなく、納得できて満足のいく過払い金返還請求のために、訴訟をするというわけです。
特に、専門家に依頼することなく、個人で法律を学びながら交渉や訴訟を行って達成できた時の満足感は大きなものでしょう。ただ、個人が過払い金返還請求を行うのはとても大変だということは留意しておいてください。
和解のほうが良いケースもある
訴訟はより金額を重視した過払い金返還請求に役立ちますが、早く過払い金を回収したい場合や、業者の経営状態によっては、早めに和解したほうが良いというケースもあります。状況を把握して、適切な選択をすることが大切です。
スピード重視なら和解もおすすめ
訴訟したほうが過払い金が多くなると言っても、そのお金が戻ってくるのにはより長い期間がかかります。もしまとまったお金が必要でなるべく早く過払い金を手にしたいのであれば、訴訟はせずに交渉で和解してしまうのも良いでしょう。
個人が任意で行う交渉では、金融業者側が満額を提示してくることはまずありません。さらに、より減額するために業者が強気で出てきますし、無駄に引き延ばすような対応をされることもあります。業者の提示した条件をすんなり飲めばすぐに過払い金を振り込んでもらえるかもしれませんが、満足できる結果にならないことも増えます。
訴訟無しでもより良い条件で過払い金返還請求を行うのであれば、信頼できる弁護士や司法書士に依頼してしっかり打ち合わせをして行うことが大切です。専門家が対応してくれるなら話し合いもスムーズですし、過払い金の減額も抑えることができます。
特にスピーディーな過払い金返還請求を得意としている専門家に依頼すれば、話もまとまりやすく迅速に過払い金を取り戻すことも可能です。また、専門家に相談すれば訴訟と和解のどちらがお得なのかも判断しやすくなります。
業者が倒産するという可能性も
テレビやラジオのCMなどで過払い金についての認知度が上がった影響もあってか、過払い金返還請求を行う人も増えています。そのため貸金業者はこれまでにも多くの過払い金の返還を行っていて、それが経営状態に影響していることもあります。さらに個人の借入総額を年収の三分の一までに抑える総量規制もあるため、貸金業者は近年大きな痛手を負っているのです。
こういった状況で経営状態が悪化した貸金業者は少ない金額での和解条件を提示してくることも多いのですが、さらに状況が悪化すると倒産してしまうこともあります。倒産した業者からの過払い金の回収は、かなり難しくなるという問題があります。
全額返還にこだわって交渉を続けたり訴訟を提起したら業者が倒産して一円も取り戻せなかった、となれば損をしてしまいます。業者の経営状態を見てリスクを感じたら早めに手続きを行い、状況によっては多少納得できなくてもすみやかに和解に応じて過払い金を回収したほうが良いということもあります。
いずれにしても、まだ請求していない過払い金があるなら早めに過払い金返還請求の手続きを始めておくことが大切です。
まとめ
過払い金返還請求は返還金額や返還までの期間なども考えながら行う必要があります。より有利な条件での交渉や訴訟すべきかどうかの判断を慎重に行うには、まずは専門家である実績豊富な弁護士などを探して、相談することをおすすめします。