過払い金請求の住宅ローンへの影響分析

過払い金請求は法律で認められた正当な行為ですので、基本的にはデメリットなしで行えます。ところが、過払い金請求をしても債務が残るようなら任意整理をすることになるので、個人信用情報に異動と記録されます。そうなると住宅ローン審査にも影響するので注意が必要です。

過払い金請求は正当な権利

過払い金が発生した原因は主に2つあります。すなわち、改正前貸金業法の「みなし弁済」の制度と改正前の出資法です。現在ではどちらの法律も改正され「みなし弁済」は完全に否定されました。そのため、過払い金請求は正当な権利です。

過払い金が発生した原因

過払い金が発生した原因は、改正前の貸金業法にありました。改正前の貸金業法では、「みなし弁済」という制度が認められていました。「みなし弁済」というのは、「債務者が任意に弁済をした」などの条件を満たしていたら利息制限法を超えた金利も有効とみなすという制度です。「任意に」というのは自由な意思に基づいてという意味です。ほとんどの貸金業者は20%超29.2%以下のグレーゾーン金利を設定していました。本来なら利息制限法を超えた金利の部分は違法となるのですが、貸金業者は「債務者が自主的に支払ったのだから合法だ」と主張していたのです。
過払い金が発生したもう1つの原因は、改正前の出資法にもあります。改正前の出資法では上限金利が29.2%となっていました。出資法に違反すると厳しい罰則の対象となるので、正規の貸金業者は出資法の上限である29.2%は守っていました。一方の利息制限法では上限金利が15%〜20%となっています。そして、利息制限法には罰則規定がなかったために、多くの貸金業者は利息制限法には違反するが出資法には違反しないグレーゾーン金利を設定していたのです。

現在では法律が改正されている

過払い金が発生する1つの原因であった「みなし弁済」は、2006年の最高裁判決でほぼ完全に否定されました。その判決を受けて、2010年に改正貸金業法が施行されることになります。改正貸金業法では「みなし弁済」の規定はありません。また、同じく2010年に出資法も改正され、上限金利が20%になりました。そのため、現在では過払い金が発生する心配はほぼなくなっています。
2006年の最高裁判決を受けて、消費者金融やクレジット会社は次々と金利の引き下げを実施しました。金利の引き下げを行ったタイミングはバラバラですが、2007年〜2008年の間にほとんどの貸金業者が合法な金利まで引き下げています。
過払い金請求のピークは2008年〜2009年くらいです。過払い金ブームなどと呼ばれていました。日本貸金業回が公開しているデータを見てみると、2010年から徐々に件数が減少していき、2015年にはピーク時の半分以下にまでなっていますね。テレビCMで「2017年に多くの過払い金が時効になる」と宣伝されているように、今後はさらに過払い金請求の件数が減少していくことが予想されます。

ブラックリストに載るの?

過払い金請求は法律で認められた正当な権利なので、なんらデメリットはありません。注意すべきなのは、過払い金請求後に借金が残るかどうかです。借金が残った場合には任意整理をすることになるので、ブラックリストに載ってしまいます。

過払い金請求はデメリットなし

前述したように、過払い金請求は正当な権利ですので基本的にはデメリットがありません。過払い金は民法上の「不当利得」と解釈されています。相手の不当な行為によって払いすぎたお金を返してもらう権利です。利息制限法で定められている上限を超えた金利をとっていた貸金業者の行為が、「不当な行為」にあたります。債務者は相手の不当な行為によって損害を受けた被害者ですので、その損害賠償をすることにデメリットがあってはおかしいのです。
かつては、過払い金請求をしたらブラックリストに載っていた時期もありました。しかし、2010年に金融庁が「過払い金返還請求について事故情報を登録すれば、国の指定信用情報機関から除外する」という通達を出したことからこれは改善されました。現在では、過払い金請求をしても個人信用情報ブラックリストに登録されないことはもちろん、なんら不利な情報が残りません。
このように、基本的にはデメリットなしなのですが、クレジット会社に過払い金請求をする場合にはカードが解約扱いになる可能性があるので注意です。これはクレジット会社の判断によるので絶対とは言えません。

任意整理になる場合には注意

過払い金請求にはなんらデメリットがないと書きましたが、それはあくまで過払い金請求で問題が完結する場合です。例えば、借金の残高が500万円あって過払い金が300万円ある場合には、過払い金請求をしても200万円の借金が残ってしまいますよね。この場合には残った200万円について任意整理をすることになります。任意整理は債務整理の一種なので、ブラックリストに載ってしまいます。
クレジット会社への過払い金請求では、ショッピング枠の残高にも注意してください。ショッピング枠の残高も一緒に計算されてしまうからです。例えば、キャッシング枠の残高が200万円、過払い金が300万円の場合、差し引き計算すると借金はゼロになって差額の100万円が戻ってきます。ところが、ショッピング枠の残高が150万円あったら50万円の債務が残るので任意整理をしなければならないという、まるで違う結果になります。このように、複雑なケースでは弁護士などに相談をしたほうがいいでしょう。任意整理になったらブラックリストに載るという大きなデメリットがあるので、なるべく避けたいところです。

住宅ローンへの影響は?

すでに住宅ローンを借りている人の場合、過払い金請求をしても基本的に影響はありません。これから住宅ローンへの申し込みを行う人は、場合によっては与信審査に影響するので注意が必要です。任意整理をするかどうかが重要なポイントです。

ローンをすでに借りている場合

すでに住宅ローンを借りている場合には、過払い金請求をしてもなんら影響はないと言えるでしょう。先述しましたが、クレジット会社に対して過払い金請求をするとカードが解約扱いになることがあります。それと同じように、住宅ローンについても契約の見直しや一括返済を迫られるのではと不安になるかもしれません。しかし、住宅ローンの借入先は銀行や信用金庫となります。銀行や信用金庫のカードローンで過払い金が発生するということはまずないので、これは問題になりません。銀行や信用金庫がグレーゾーン金利を設定するということはまずないです。
そもそも、消費者金融やクレジット会社に過払い金請求をしても、住宅ローンを借りている銀行や信用金庫がそのことを知る方法がないので、全く影響しません。仮に知られてしまったとしても、払いすぎたお金を返してもらうだけであり、本人になんら落ち度がないのでマイナスはありません。ただし、過払い金請求と任意整理をセットで行うとブラックリストに載るので、ローンの借り換え審査には影響することがあります。住宅ローンの借り換えを予定している人は注意しましょう。

これから申し込みをする場合

まだ住宅ローンを借りておらず、5年以内に申し込みの予定がある人は、場合によっては住宅ローンの与信審査に影響するので注意が必要です。すでに完済している借金について過払い金請求をする場合には、ただお金が戻ってくるだけなのでなんの心配もありません。まだ完済していない場合には、過払い金を引き直し計算をしてプラスになるかそれともマイナスになるかが非常に重要です。例えば、残債務が200万円、過払い金が100万円だった場合、引き直し計算をしても100万円が残ります。この残った100万円について、任意整理という手続きをしなければならなくなります。
逆に、残債務が100万円、過払い金が150万円だったら借金は残らないので、任意整理という手続きにはなりません。任意整理になるかどうかは、ブラックリストに載るかどうかでもあるので、非常に重要なポイントです。任意整理をしたら、およそ5年間はローンの審査に通らなくなります。これから住宅ローンへの申し込みを予定している人は、残債務があるかどうかをしっかりと見極めることが必要です。もしもブラックリストに載ってしまったら、5年間は住宅ローンを我慢しなければならなくなります。

他に注意すべきポイント

クレジット会社に過払い金請求をする場合には、カードが一旦解約になる可能性があります。また、ショッピング枠の残高も一緒に計算されるので要注意です。その他、グループ会社や保証業務を行っている会社との相殺にも注意しておきましょう。

クレジット会社に請求する場合

クレジットカードのキャッシング枠にも貸金業法が適用されるので、過払い金請求の対象です。ショッピング枠は借金ではないので、利息制限法や貸金業法の対象外です。そのため、仮に年20%を超える手数料をとられていても、ショッピング枠については過払い金請求ができません。
クレジット会社によって異なりますが、過払い金請求を行ったカードは一旦解約扱いになることが多いです。公共料金などをカードで支払っている場合には、引き落としもできなくなるので注意が必要です。さらに、カードが解約扱いになったら、ショッピング枠の残高も一緒に計算されてしまいます。借金ではないものの、クレジット会社に対して支払うべきお金であることに変わりはないからです。一緒に計算された結果、過払い金を引き直し計算しても借金が残り任意整理という扱いになる可能性もあるので注意です。
住宅ローンの審査が控えている場合には、ブラックリストに載ることは絶対に避けたいところなので、弁護士などの専門家に相談をしてましょう。専門家に相談すれば、過払い金請求をしたらいくらのお金が戻ってくるのか、任意整理になる可能性はあるのかなどをあらかじめ説明してくれます。

グループ会社と相殺する場合

例えば、旧ポケットバンクとプロミスは同じグループ会社に属しています。そのため、旧ポケットバンクに過払い請求をした場合、プロミスから借りている残高と相殺されてしまうということが起こり得ます。また、保証業務を行っている消費者金融に過払い金請求をする場合にも注意が必要です。例として、アコムはじぶん銀行カードローンなどの保証会社となっています。この場合、じぶん銀行カードローンに残高があったらアコムへの過払い金請求に影響する可能性があります。過払い金請求をする時点で、グループ会社からの借金がないかなどを確認しておきましょう。
住宅ローンの審査は年齢・年収・勤続年数・家族構成などを総合的に見て結果が決まります。個人信用情報に問題があっても、総合的に属性が良かったら審査に通る可能性もあります。しかし、ブラックリストに載るということは重大な違反があったということなので、マイナスが非常に大きいです。もしも任意整理になってしまったら、5年間は住宅ローンを諦めなければならないと考えて、慎重に過払い金請求の手続きを行いましょう。やはり専門家に相談をすることがおすすめです。

まとめ

過払い金請求は、タイミングさえ間違わなければ基本的に住宅ローンの審査に影響を及ぼすものではないです。より確実に審査に通過したい場合には、住宅ローンの審査に通った後にするべきでしょう。弁護士などの専門家に相談をすることが、安全度を上げる方法です。

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