延滞中の過払い金請求がもたらすデメリットと対策

借金を延滞中の人は、約束を破っているという罪悪感から過払い金請求ができる権利があってもそれを行使しないことがあります。ここでは、借金を現在進行形で延滞中の人もしくは過去に延滞したことがある人の過払い金請求、そしてそのデメリットについて解説します。

延滞中の人の過払い金請求の権利

借金を延滞中でも過払い金請求の権利は失われていません。そのため、延滞中でも問題なく過払い金請求をすることができます。場合によっては、すでに借金を完済していたので延滞をしていなかったという結果になることもあります。

過払い金請求をできる人とは

過払い金請求をする人が満たしているべき条件は、「法定上限金利を超えて借金の返済をしていたこと」「時効が過ぎていないこと」の2点です。法定上限金利とは利息制限法で定められている15%〜20%のことです。上限が18%と言われることが多いのは、借金の金額が10万円以上100万円未満のケースが多いからでしょう。借入金額が100万円以上の場合は15%です。
例えば、3社からそれぞれ80万円、70万円、50万円を借りていた場合の合計借入金額は200万円ですが、上限金利は18%です。なぜなら、1社からの借入金額は10万円以上100万円未満だからです。複数の会社からの借入れはリスクが高いと言われているのには、こういった理由があります。
現在ではほぼすべての貸金業者で利息制限法が守られています。ところが、2006年よりも前にはこの法定上限を超える利息、いわゆるグレーゾーン金利がとられていました。グレーゾーン金利で借金を返済していた人には過払い金請求の権利があります。その時効は「最後に取引をしてから10年」です。最後の取引とはほとんどの場合に借金を完済したタイミングとなるでしょう。

延滞中でも権利は失われていない

過払い金請求をするための条件には「延滞をしてないこと」などは含まれていません。「法定上限金利を超えて借金の返済をしていたこと」「時効が過ぎていないこと」の2点を満たしていたらOKです。つまりは、過去に延滞をしていたことがある人はもちろん、現在進行形で延滞中の人でも問題なく過払い金請求ができるということです。
具体例をあげてみましょう。1997年7月に大手消費者金融でカードローンを契約し、80万円を借りました。そのときの金利は28%のグレーゾーン金利だったとします。法定上限金利よりも10%高いので、この分の利息は払い過ぎている状態です。2007年7月に金利は18%に引き下げられました。この場合、1997年7月から2007年7月までの10年間支払っていた利息のうち10%分が払い過ぎなので、過払い金請求をすることで取り戻せます。仮に、元本はいっさい減らさず利息だけを払い続けていたとすると、80万円ものお金が戻ってきます。
このケースでは、むしろ早めに弁護士などに相談をして過払い金請求をするべきでしょう。過払い金の金額が80万円なので、すでに借金を完済している可能性が高いです。すでに完済していたならそもそも延滞をしていなかったということになりますよね。

遅延損害金を主張されたら?

貸金業者が「グレーゾーン金利ではなく遅延損害金だった」と主張してくることがあります。この場合でも、貸金業者が間違った計算をしている可能性があるので諦めないことが大切です。計算が複雑になりそうなら専門家に相談をしましょう。

遅延損害金の上限は?

改正前の利息制限法では、遅延損害金利率は法定上限金利の1.46倍まで設定することが認められていました。そのため最高で29.2%まで認められていたことになります。2010年6月施行の改正利息制限法より遅延損害金の最大は20%となりました。
2010年6月以前には、借入金額が10万円超100万円以内だった場合の最高遅延損害金利率は26.28%でした。貸金業者は「グレーゾーン金利ではなく、延滞をしていたため遅延損害金利率の26.28%を設定していた」と主張してくることがあります。この場合、金利が26.28%だったなら貸金業者の主張は正しいように思えます。しかし、貸金業者は延滞をしていないときまで遅延損害金利率の26.28%で利息をとっていたというケースが過去にありました。
例えば、2006年1月から2月まで延滞をしていただけなのに、それ以降もずっと遅延損害金利率の26.28%で計算していたというケースなどです。その場合には信義則違反になって遅延損害金の主張が認められない可能性があります。このように、貸金業者が遅延損害金の利率だったと主張をしてもそれが間違いである可能性があるので、諦めないことが大切です。

専門家に相談をするのが正解

グレーゾーン金利で借金を返済していたとしても、その期間中に延滞をしていたら計算が複雑になります。借入金額が10万円超100万円以内の場合なら最高遅延損害金利率は26.28%です。つまり、この利率以内なら合法ということです。ただし、2010年6月に改正利息制限法が改正されてからは遅延損害金の最高も20%になったので、2010年6月より後の延滞にはこれはあてはまりません。
「1997年7月から2007年7月までの10年間、グレーゾーン金利の28%で返済していた」という先にあげた例で考えてみます。もしもこの例で2002年の1月から3月まで延滞をしていたという事実があったら、貸金業者はその期間中は遅延損害金利率の26.28%であったと主張してくるでしょう。その場合、違法な金利の部分が1.72%になり、請求できる過払い金の金額が減少します。
過払い金は自分で計算することもできますが、計算が複雑になりそうな場合には弁護士や司法書士などの専門家に相談をしたほうがいいです。計算を間違えて過払い金を少なく計算してしまっていたとしても、貸金業者は指摘してくれません。

過払い金に関する豆知識

遅延損害金についてはときどき間違った解説をしているブログ記事などがあるので注意です。延滞をすると通常の金利はかからなくなり、そのかわりに遅延損害金が発生するようになります。貸金業者は利用者の無知につけこんで、利用者側が一方的に不利になるような主張をすることもあるので注意です。

遅延損害金に対する誤解

遅延損害金に関しては誤解をしている人もいます。よくあるのが、「通常の利息に上乗せして遅延損害金がかかる」という誤解です。インターネットのブログを見ても、間違った解説がされていることがあるので注意です。
通常の金利が18%だったとして、延滞をするとそれに加えて20%の遅延損害金がかかる。そのため延滞をしたときの利率は合計38%である。などと解説しているブログ記事などがときどき見つかりますが、これは間違いです。通常の金利はあくまで通常の返済でかかるものです。延滞をすると約束された利息はかからなくなります。そのかわりに、延滞をすると遅延損害金がかかります。なので、「通常の返済では金利18%、延滞をした場合には利息は発生しないが、そのかわり遅延損害金の20%がかかる」という理解が正しいです。
2010年の改正利息制限法からは遅延損害金の最高が20%になりました。そのため、延滞をしたとしても20%以上の利息をとられていたら違法です。そのような違法な利息は支払う必要がなく、もしも支払ったとしたら過払い金請求で取り戻せます。貸金業者は利用者の無知につけこんで、間違った主張をすることもあるので気をつけてください。

2006年以降の過払い金

一般的に、2006年までにクレジットカードや消費者金融でお金を借りていた人は過払い金が発生している可能性が高いと言われています。ちなみに、クレジットカードの場合ショッピング枠は対象外です。ショッピング枠には貸金業法や利息制限法が適用されないからです。キャッシング枠については、貸金業法や利息制限法が適用されます。なので、クレジットカードでお金を借りていた人も過払い金請求ができる可能性があります。
実は、2006年より後にも過払い金が発生している可能性があります。クレジット会社や消費者金融が金利の引き下げを実施したのは2007年から2008年でした。実際に金利が引き下げられるまでは過払い金が発生しています。
2017年頃には「もう過払い金請求ができなくなる」といった内容のCMが流れました。こういったCMなどのせいで、「時効が10年だからもう時効なのか」と誤解をしてしまった人がいます。実際には「最後に取引をしてから10年」が時効です。例えば、2012年に完済をしたなら2022年までは時効がきません。とはいっても、過払い金請求の件数は今後減少していくことが予想されています。

個人信用情報への影響

過払い金請求をして返還を受けた後にも延滞の記録などが残っていることがあります。もしも個人信用情報に不利な記録が残り続けていたら、貸金業者に対して訂正の要請を出しましょう。自動的に訂正されることはないので、自分で動くことが大切です。

延滞の記録が残り続ける?

過払い金請求をして借金がゼロになったのに、個人信用情報に延滞の記録が残り続けることがあります。単純に貸金業者のスタッフが個人信用情報への報告を忘れていたという可能性もありますが、嫌がらせのためにわざと報告をしないケースもあるようです。貸金業者にとってはできるだけ過払い金請求をしてほしくないため、このような嫌がらせをしているというわけですね。
過払い金請求をして返還を受けたあとも延滞や「異動」の記録が個人信用情報に残っていたら、それは間違った情報です。そのときの対応ですが、業者に問い合わせるというのが最初にすることです。基本的には貸金業者に訂正の要請を出せば対応してくれるはずです。
なんらかの理由で貸金業者が対応してくれず、正しくない記録が残り続けている場合には個人信用情報機関に対して訂正の要請を出しましょう。その際には情報が正しくないことを証明する書類などが必要になります。過払い金請求であれば、貸金業者との和解書などです。個人信用情報が間違って記録されいても自動的には通知されません。信用情報をマメにチェックするなど、自ら動くことが重要です。

過払い金請求はデメリットなし

債務整理をするといわゆるブラックリストにのります。債務整理には4種類あり、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産です。過払い金請求もこれに含まれることがありますが、正確には過払い金請求は債務整理ではありません。そのため、基本的にはいっさいデメリットはないはずです。過払い金請求をしたら個人信用情報に不利な記録が残るというのは過去の話です。現在ではブラックリストにのらないどころか、いっさい不利な記録が残りません。
ただし、過払い金請求と任意整理をセットで行う場合には話が違ってきます。セットで行う場合には、結果的に任意整理をすることになるのでブラックリストにのります。この判断方法ですが、「借金を完済できるかどうか」です。自分で軽く過払い金の計算をしてみた結果余裕で借金を完済できるようなら、任意整理になる可能性は低いです。もしも判断に迷うようなら、専門家に相談をしてみてください。専門家は依頼をされていないのに勝手に債務整理をするようなことはしません。見積もりを出す段階でいくらの過払い金が戻ってくるのか、任意整理の可能性はあるかなどを説明してくれます。

まとめ

延滞や滞納をしていても過払い金請求の権利は失われません。貸金業者は債務者の無知につけこんで、過払い金請求できないと思われるような主張をしてくることがあるので注意です。とはいっても貸金業者はプロです。自分では荷が重いと感じたら弁護士などに相談をしましょう。

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