個人での過払い金返還請求 利点とリスクの分析

過払い金返還請求は、弁護士や司法書士といった専門家に依頼しなくても個人で行うことができます。ただ、多くの手間がかかり返還される金額も減りやすいというデメリットもあるため、実際に行う際は個人での過払い金返還請求にメリットがあるのかを考えるのが重要です。

個人で行うのが向かない人もいる

個人での過払い金返還請求は、その人の状況や目的によっては向いていないという事もあります。やりはじめてから困ったと感じたり後悔したりすることがないように、まずは向かないケースを把握しておくことが大切です。

環境によっては難しい

個人で過払い金返還請求を行うことはできますが、様々な理由からそれが向かない人もいます。そういった人は、最初から専門家に依頼するのがおすすめです。
まず、スケジュールの都合がつきにくい人には向いていません。個人で過払い金返還請求を行う場合、交渉なども全て自分で行うことになります。交渉しても貸金業者が納得のいく金額の返還に応じてくれない場合は、訴訟を提起する必要もあります。
特に訴訟になった場合は、裁判所に足を運ぶことになります。専門家に依頼すれば多くの手間を代わりに行ってくれますが、個人の場合は平日に何回も裁判所まで出向くことになり、時間が削られるのです。仕事があり平日に休めないという場合は特に難しいと言えます。
また、家族に借金をしていたことを知られたくないという場合にも向いていません。個人で過払い金返還請求を行えば貸金業者との電話や郵便物でのやりとりが発生しますし、訴訟になると裁判所とのやりとりや出廷もあるため、家族に知られずに行うのは難しいからです。家族に秘密で過払い金を取り戻したい人は、最初から専門家に依頼するのがいいでしょう。

個人だと全額返還は難しい

個人で過払い金返還請求を行う際に問題になるのが、返還額です。多くの場合、専門家に依頼するよりも減額されやすくなります。
過払い金は貸金業者に払い過ぎたお金ですから、本来は全額返してもらいたいものです。ですが、貸金業者側としては返す金額はなるべく少なくしたいものなので、交渉の過程で少しでも減額しようとしてきます。
この際、法律のプロである弁護士や司法書士に依頼していれば業者とうまく交渉を進めることが可能です。過払い金について知識と経験が豊富な専門家であれば、より満足のいくスムーズな交渉もできるでしょう。一方、法律の素人である個人の場合は、どうしても金融のプロである貸金業者のペースで話し合いが進んでしまう可能性が高くなるのです。専門家がついていないため、最初から業者に足元を見られてしまうという事もあります。
もし交渉で和解できなければ過払い金返還訴訟になりますが、こちらも専門家がいないと大変です。より多い金額の過払い金を取り戻したいとか、過払い金が全額戻ってこないと納得できないという人は、個人で過払い金返還請求を行うのには向いていません。

個人での過払い金返還請求の利点

個人で過払い金返還請求を行う場合のメリットは、費用の節約や達成感です。特に手元に残るお金が多くなるというのはポイントです。そのメリットが個人で過払い金返還請求を行うだけの価値があるのかというのが、判断の大きな基準となります。

個人で行うメリットとは

大変な面が多い個人での過払い金返還請求ですが、それでも個人で行う人がいるように、メリットも存在しています。
一番大きなメリットは、費用の節約です。全て自分で行えば、弁護士や司法書士といった専門家に依頼する際に発生する着手金や報酬金といったものが不要になります。特に過払い金の金額が少ないと、せっかく過払い金が戻ってきても、費用を差し引いたら大した金額が残らなかったということがあるため、手元に残るお金を多くしたいという人は個人での請求にチャレンジする価値も高まります。
また、達成感を感じられるというのもメリットの一つです。過払い金返還請求を行うには法律の知識が必要なので、勉強して実際に過払い金を取り戻すことができれば大きな達成感が得られます。
最近はネット上に個人での過払い金返還請求についての情報も多くありますし、過払い金を計算するためのソフトや必要書類のフォーマットなど個人での過払い金返還請求をサポートしてくれる便利なものも無料で公開されています。そういったものを利用すれば、自分で過払い金を取り戻すための手間を多少は省くことも可能です。

どの程度の費用が節約できるか

個人で過払い金返還請求を行うときの最大のメリットである費用の節約ですが、実際にどのくらい節約になるのか知っておくのも、個人で行うか専門家に依頼するかの判断の基準になります。
過払い金返還請求を依頼できる専門家には弁護士と司法書士がいますが、この2者の費用の差はあまりありません。必要とされる費用は、着手金・成功報酬・過払い金報酬・手数料などです。相談については無料で行っている事務所が多くなっています。
着手金は依頼の際の手付金や保証金の意味がありますが、無料としている事務所もあります。手数料は事務処理や収入印紙代といった実費への負担で、事務所によって異なります。
報酬となる2種類は、依頼が成功した場合に支払うものです。成功報酬は過払い金が返還された場合に支払う費用で、返還に成功した業者一社ごとに2万円程度を支払います。過払い金報酬は、返還された金額から支払われる手数料で、交渉で和解した場合は20%、訴訟になった場合は25%が最大と日弁連の規定で定められています。
着手金と成功報酬は業者ごとに支払うことになるので、過払い金返還請求をする業者の数が多いほど高額になります。個人で請求を行えば、こういった費用の節約になります。

個人での準備の手間を考える

個人での過払い金返還請求は、過払い金の算出や必要書類の準備といったものも全て自力で行うことになり、多くの手間と時間がかかることになります。状況によっては時間がかかることが致命的な問題となることもあります。

引き直し計算の難しさ

過払い金返還請求をしようと考える人のほとんどは、これが初めての過払い金返還請求のはずです。どんなものでも、慣れていないことをするのはとても大変なものですし、手間と時間がかかることになります。
特に過払い金返還請求で大変だと言われるのが、引き直し計算です。これは実際に支払った利息を利息制限法の上限金利に則って計算して、過払い金を算出するために必要です。ここで割り出された過払い金が、請求することのできる金額です。負債総額が大きいほど過払い金も高額になり、思わぬ金額が返ってくることもあります。この引き直し計算をするには、まず過払い金返還請求をする貸金業者などから取引履歴を開示してもらう必要があります。
引き直し計算自体はそれほど難しいものではありませんが、金利の細かい計算が必要で、取引業者の数や取引期間によっては作業量が膨大になり、借り換えを繰り返して取引内容が複雑になっていた場合などはより大変な作業となります。人によっては時間を消費し、苦痛を感じる可能性もあります。
ネット上には無料の過払い金計算ソフトもありますが、専門家に依頼したほうがずっと楽になります。

書類の準備も大きな手間

過払い金を返してもらうには、過払い金の金額を算出するだけでなく、多くの書類を用意する必要もあります。弁護士や司法書士に依頼すれば法律のプロがスムーズに用意してくれるものも自分で作成しないといけないので、時間や手間がかかるのは避けられません。
過払い金返還請求が訴訟までいった場合に必要となる書類は、取引履歴・引き直し計算書・過払い金返還請求書・根拠証明書・登記簿謄本・訴状・訴状費用額確定処分申立書などです。弁護士や司法書士に依頼する場合は、用意するのは身分証明書と印鑑くらいで、あとの必要書類は集めたり作成してもらうことができます。
そういった手間がかかってでも過払い金を自分の力で取り戻したいと考えている人でも、過払い金には時効が存在するという点には注意が必要です。過払い金は業者との取引が完了してから10年で時効となるため、時効を中断するために過払い金返還請求を行うことになります。もし時効が迫っているのであれば、個人で過払い金返還請求を行おうとして思わぬ時間がかかってしまうといけないので、最初から専門家に依頼して迅速に対応してもらいましょう。

業者との交渉の難しさ

過払い金返還請求で重要となる業者との交渉は、専門知識を持っていない素人には難しいものとなります。納得できる金額が得られない上に精神的にも大変な思いをするという事態にもなりかねないので、注意が必要です。

過払い金の返還額は交渉次第

必要な書類を準備するのは、手間や大変さはありますが素人でも行えます。ですが、過払い金返還請求で重要となる貸金業者との交渉は、専門家でない素人であるというのが大きなデメリットとなります。
多少勉強してもこちらが素人であるのに対して、交渉しなくてはいけない相手となる貸金業者は法的な知識や運用実績、多くの経験を持つお金のプロです。個人ではまず適わない相手といえます。
貸金業者は返すお金を少しでも減らそうと交渉してきます。多くの場合、提示される金額は過払い金の5〜7割程度なのですが、専門家がついていない素人だと足元を見られてさらに大幅に減額される可能性もあるのです。
話し合いでも完全に相手のペースとなり、全額からは程遠い金額で和解してしまうというケースも多くあります。もしお金が必要で過払い金を少しでも早く返してほしいというのであれば、早期の和解もメリットがあるので問題ありません。ところが、納得できないと思っていても交渉しているうちに嫌になったり面倒になったりといった状態に誘導されることもあり、そういったケースでは後から後悔することになります。

精神的な苦痛も発生する

貸金業者との交渉は、実際に対面して行われたり電話で行われたりします。よりスムーズなやりとりには対面のほうがいいのですが、そもそも交渉が苦手という人も少なくありません。駆け引きに慣れていない人にとっては、話し合いはかなりの精神的な疲労を感じますし、大きな苦痛を感じるという事もあります。
過払い金返還請求は法律で認められている正当な権利です。ですから、堂々と全額の返還を請求することに何の問題もありません。しかし貸金業者も仕事ですし、過払い金の返還が大きな負担となって経営状態が悪化し倒産する事例もあるため、慎重で巧みな交渉をしてきます。
納得できる和解案が提示されなければ訴訟を提起することもできますが、多くの業者は訴訟を嫌がります。なぜなら、過払い金は違法なものなので、裁判になれば負ける可能性が高いからです。そのため訴訟を避けようとして納得できるような金額を提示してくれればいいのですが、訴訟を避けるために反論してくることもあり、専門知識が無かったために負けるという危険もあります。
それだけの大変な思いをして個人での過払い金返還請求をする価値があるのかというは、始める前に必ず考えておきたいことです。

まとめ

費用の節約ができるのが大きなメリットである個人での過払い金返還請求ですが、やってから後悔しないように考えることが大切です。専門家への相談なら無料で利用できることが多いので、まずはそちらで相談してから判断するというのも選択肢の一つです。

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